重心始動の習得 ステップ2.体幹操作

執筆者/トータルフィットネスサポート代表 齊藤 登

身体の効果的な使い方「重心始動」での体幹操作についてご紹介します。

1. 体幹の構造と特徴

(1)体幹とは

身体の部位の名称で四肢を除いた胴体を指します。特にスポーツでは胸郭と骨盤の間にある横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋郡に囲まれた部分を指し、一般的に「コア」と呼ばれています。

(2)体幹の解剖

  • 骨格:脊柱(腰椎)
  • 腹腔:各種臓器
  • 骨格筋:腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋、広背筋、下後鋸筋、脊柱起立筋群(腰腸肋筋、胸最長筋)、多裂筋、長回旋筋、短回旋筋、横隔膜、骨盤底筋群(外肛門括約筋、球海綿体筋、坐骨海綿体筋、深会陰横筋、浅会陰横筋、尾骨筋、肛門挙筋)

(3)体幹の構造的特徴

体幹は胸郭や骨盤のように骨格で覆われていないため、自由に動かすことができる構造となっています。

2. コアについて

コアは腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋群の4つの筋から構成されています(図1)。これらは全て随意筋のため、自分の意思で収縮することができます。

(1)コアを構成する4つの筋

a. 腹横筋
腹筋の中でもっとも深層にある腹巻状の筋で、腹部の内圧を高めます。腹横筋の後方は胸腰筋膜を介して腰椎へ付着します。

b. 多裂筋
脊柱に付着する斜めに走る短い筋で、脊柱の回旋や伸展などに働く筋です。また多裂筋は、歩行などの全ての抗重力活動においても働きます。
研究実験から、腰部脊柱起立筋群は腰椎屈曲の約90%で筋活動が中止するが、多裂筋の限界点は脊柱起立筋群にみられるような特徴はないことが報告されています。したがって多裂筋は回旋の主動作筋としてよりもむしろ安定筋として作用しているものと考えられています。

c. 横隔膜
横隔膜は胸郭下口の縁から起こり、中心部に停止する筋で主に呼吸運動に働きます。横隔膜の中心部は膜状の腱からできており、腱中心と呼ばれています。

d. 骨盤底筋群
肛門挙筋を主体とする漏斗状の筋板でできており、腹圧がかかる際に収縮して内臓の下垂を防ぎます。

(2)運動時におけるコアの働きと筋収縮様式

コアの働きは自由に動く体幹の部分を、筋収縮により制動します。また、その時の筋収縮様式はアイソメトリクスおよびエキセントリック・コントラクションが主となります。

<用語解説>
【アイソメトリクス】日本語で等尺性収縮と呼ばれる筋収縮様式の1つで、関節の動きをともなわない状態での筋力発揮のことをいいます。
【エキセントリック・コントラクション】筋肉に抵抗がかかるとき、抵抗のほうが筋張力より大きく、筋が抵抗に負けて、引き伸ばされながら力を発揮する状態をいい、伸張性筋収縮または遠心性筋収縮とも呼ばれます。

(3)コアの強化の重要性

コアが強化され運動時に自動的に働くことによって、腹圧をより高めることが可能になります。このことにより『体内の土台』が構築され、下肢や上肢を動かす際の筋力発揮や身体の安定性に大きく影響を与えます。したがってコアを強化することがスポーツパフォーマンス向上において重要となります。

a. 腹圧を高めた場合の機能的変化
腹圧を高めることによって腹部および脊柱を硬い円柱に転換することができます。これは骨・靭帯性の脊柱よりも剛性が増加した構造となります(図2)。

b. 運動と腹横筋の関係
腹横筋は上下肢を動かす際に、身体内で最も早く収縮する筋です(表1)。これは腹圧を高めることによって体幹をいち早く安定させ、上下肢の動きをサポートするためです。また、体幹の伸展・屈曲時にも活動します。

表1. 上肢と下肢の運動における腹横筋の事前収縮時間 *ms=1/1000秒
運動部位 腹横筋の事前収縮時間
上肢 主動作筋の約30ms(0.03秒)前に活動する
下肢 主動作筋の約110ms(0.11秒)前に活動する

3. 呼吸法とコアの関係

(1)呼吸法について

呼吸法は大きく分けると胸の筋群を主体に行う胸式呼吸法、腹部の筋群を主体に行う腹式呼吸法の2種類があります。この2つの呼吸法で、コアと関係が深いものは腹部の筋群を使う腹式呼吸です。また、呼吸は重心の位置にも影響を及ぼします(表2)。

表2. 呼吸法とコアの働き、重心の位置
呼吸法 コアの働き 重心の位置
胸式呼吸 コアが働きにくいので身体が安定しにくい 息を吸ったときに重心が上がる
腹式呼吸 コアが働きやすいので身体が安定する 息を吸ったときに重心が基本位置(臍下4~5センチ)になる

a. 胸式呼吸
息を吸うときに肩と胸郭を引き上げて行う呼吸法で、比較的浅い呼吸になります。

  • 横隔膜の動き:息を吸ったときに横隔膜が伸長され引きあがり、息を吐いたときに元に戻る
  • 腹腔の状態:息を吸ったときに臓器が押し上げられる、息を吐いたときに臓器が元に戻る
  • 主な活動筋:横隔膜、胸郭に付着する呼吸補助筋群

b. 複式呼吸
息を吸ったときにお腹が膨らむ呼吸法で、比較的深い呼吸ができます。

  • 横隔膜の動き:息を吸ったときに横隔膜が収縮して下がり、息を吐いたときに元に戻る
  • 腹腔の状態:息を吸ったときに臓器が押し下がり、息を吐いたときに押元に戻る
  • 主な活動筋:横隔膜、腹横筋

4. コアに対してのトレーニング

コアに対してのトレーニングはもともと腰痛改善のリハビリテーションなど医療の現場で行われていましたが、スポーツ界においても導入されるようになりました。
このトレーニングは、一般的な筋力トレーニングとは異なり、筋力を強化するというよりも正常な脳内の運動プログラムを再構築させ、機能を活性化させるためのものになります。トレーニングの進め方としては、コアを構成する筋の中で一番重要となる「腹横筋」を活性化させ、その後、徐々に他の筋群との協調性を高めていきます(表3)。

表3. コアに対してのトレーニングの進め方
段階 運動内容
ステップ1 コアの単独収縮
ステップ2 上下肢動作時でのコア収縮(部分協調)
ステップ3 歩行動作でのコア収縮(全身協調)
ステップ4 走行動作でのコア収縮(全身協調)
ステップ5 スポーツ動作でのコア収縮(特異的協調)
ステップ6 コア収縮の自動化(無意識での作動)

(1)腹横筋の収縮方法

腹横筋を収縮させるには、お臍を背骨に向かって軽く引き込むようにします。呼吸法は腹式呼吸を用い、鼻から息を吸ってお腹を膨らまし、口から息を吐いてお腹を締めていきます。
ポイントとしては腹横筋は過剰に収縮する必要はなくお腹の中を意識する程度でかまいません。

(2)コアに対してのトレーニングプログラムの例

①. 仰向けでの単独収縮
②. 仰向け・上下肢動作時での協調収縮
③. 四つん這いでの単独収縮
④. 四つん這い・上下肢動作時での協調収縮
⑤. 座位での単独収縮
⑥. 座位・上下肢動作時での協調収縮
⑦. 立位での単独収縮
⑧. 立位での単独収縮維持
⑨. 歩行での協調収縮維持
⑩. 走行での協調収縮維持
⑪. 専門的動作での協調収縮維持
    ↓
脳内の運動プログラムが書き換えられ、腹横筋を意識しなくても条件反射的に作動できるようになる。

(3)スポーツにおける一般的なコアに対するトレーニングの問題点

一般的なコアに対するトレーニングでは息を吐く際に、お臍を中心にして引き込むので腹腔にある臓器が上に押し上げられてしまいます。
その結果、お臍より上が少し重くなるため身体内の重量分布が変化することで重心が上に移動します。重心が上がると安定性が損なわれるため、重心を低く保つようなスポーツ競技においてはマイナスに作用することがあります。そのような場合には、一般的なコアに対するトレーニングを修正する必要があります。

5. 武道におけるコアの考え方

武道では身体を動かす際にコアが効率的に働くように独自の呼吸法を用いていることが多く、スポーツにおいてもこれらを活用することでパフォーマンス向上が期待できます(表4)。

表4. 各呼吸方法における身体への影響
呼吸法 胸式呼吸 複式呼吸 丹田式呼吸
呼吸の深さ 浅い 深い 深い
呼吸数 増加 減少 減少
腹腔 上に押し上げられる 押し下げ⇔押し上げ 押し上げ
息を吸った時の重心 上がる 基本位置に戻る 丹田(臍の下4~5cm)
息を吐いた時の重心 基本位置に戻る やや上に上がる 丹田(臍の下4~5cm)
コア筋群の活動 働きにくい 働きやすい 働く
体幹の安定性 不安定 安定⇔不安定 安定
体幹の一体化 一体化にくい 一体化にくい 一体化しやすい
メンタル面 緊張、あせり、足が地に着かない 気持ちが落ち着く(変動する可能性あり) 気持ちが落ち着く、冷静、集中、安心

(1)丹田(たんでん)について

臍下丹田といわれるように丹田は臍の下に位置し、気を貯めておく袋のようなもので力の根源になるものと考えられています。

(2)気について

武道において気とは息のことを指し、力の素であるといわれています。気と呼吸の関係性を下記に示します。

  • 吸気(きゅうき):息を丹田に吸い込んでいるとき(力を身体の中に取り込む)
  • 充気(じゅうき):丹田に吸い込んだ息を貯めているとき(力が身体中に充満している状態)
  • 呼気(こき):息を丹田から吐いたとき(力を外に出した状態で気合のこと)

(3)丹田の解剖学的所見

丹田の位置を輪切りにすると中央に臓器があり後部には背骨や脊髄神経、そして周りを覆うように筋肉、皮下脂肪、皮膚などが存在します。以上のことから、解剖学的には気を入れる袋は存在しないことになります。
  重心を低く保つようなスポーツでは腹式呼吸に比べ丹田式呼吸のほうが、腹腔、呼吸時の重心、コア筋群の活動、体幹の安定性、体幹の一体化、メンタル面において効果的に働くことが分かります。

6. 丹田式コアトレーニング

一般的なコアに対するトレーニングの場合ではお臍を中心に引き込むイメージで行いますが、丹田式コアトレーニングではお臍から4~5センチ下にある丹田を中心に下腹をやや膨らませた状態でやや締めるように行います(息を吐くとき、息を吸うとき共に腹腔を上から少し押さえているイメージ)。

(1)体幹の一体化について

丹田式コアトレーニングでは、腹横筋の下部を中心に軽く収縮させます。腹横筋の下部は骨盤に付着しているので、この部分が収縮すると腹部と骨盤が一つのユニットとして動き体幹が一体化されます。
トップアスリートたちのプレー中の体幹を観察してみると、皆、腹部と骨盤が一体となり安定して動いていることがわかります。体幹が一体化されると下半身の動きに上半身(または上半身の動きに下半身)が勝手に付いてくるので身体が崩れにくくなります。
よく武道や古武術などで「ねじらない」「ひねらない」といわれている理由は、効果的な体幹の使い方をした場合、コアが自動的に働くために極端な体幹のねじりやひねりが起こらないということを意味しています。

(2)運動時における体幹の一体化と分化の違い

a. コアを使用しない状態での運動
お腹の力を抜き運動を行う⇒下半身に対して上半身が遅れ崩れやすくなるので無駄な力や時間がかかってしまう。
例)体前屈・後屈・側屈、反復横跳び、サイドステップラン、ダッシュなど

b. コアを使用した状態での運動
丹田に力を入れ運動を行う⇒下半身に対して上半身がついてくるので常に安定した状態を保てる。
例)体前屈・後屈・側屈、反復横跳び、サイドステップラン、ダッシュなど

(3)科学的に見た丹田を意識することのメリット

丹田の位置はお臍から4~5センチ下、すなわち一般的な重心の位置を指します。この丹田を意識することによって、身体移動の際に、重心点から動くことが可能になります。その結果、身体移動がスムーズに行えるようになると考えられます。
また、丹田を意識すると腹横筋を中心としたコア筋群が活性化され、腹圧を更に高めることができます。腹圧が高くなれば体幹の円柱剛性が高まるため、より強力な『体内の土台』を構築することができるので、結果として、身体が安定し運動機能を最大限に使えるようになります。

7. 丹田式呼吸をスポーツ動作に応用する

重心を低く保つようなスポーツではやや下腹部を膨らませた(充気)状態で常に重心を丹田に置き、動き出しやインパクト等の瞬間に自動的にコアが働くようになることが必要になります。

  • 相撲の立ち合いやラグビーのタックルなど、移動前に充気により重心を下げてから動き出す
  • 野球のバッティングやサッカーのシュートなど、打つ・蹴るときの力の発揮を充気により貯めた力を爆発させる

8. 重心高のコントロール

重心高とは重心から地面までの距離で、重心位置の高さを意味します。この重心高には自分に合った最適な高さがあり(表5)、体幹操作によって高さを変化させることが可能です。
一般的に武道においては最適な重心高は丹田の位置とされていますが、個人の筋力レベルやスポーツ競技によって重心の高さは異なります。重心高が丹田と異なる場合でも、機能的に腹横筋下部が働けばパフォーマンスの低下は起きないため、自分に合った重心高を見つけることが大切です。
また、スポーツ競技によっては状況に応じて重心高を変化させることで、パフォーマンスを向上させることもできます(表6)。

表5. 重心高の違いによるスポーツパフォーマンスへの影響
重心高の高さ 機動性(動きやすさ) 安定性(崩れにくさ) 脚の負担 メンタル面
高い × 小さい あがり
最適 普通 ゾーン、フロー
低い × 大きい さがり
表6. サッカーにおける状況に応じた重心高の変化
状況 動き出し トップスピード ドリブル コンタクト 空中
重心高の高さ 最適 高い 最適 低い 高い

9. 体幹の効果的な使い方のまとめ

  • コアをトレーニングすることによって体内の土台が構築されるため、筋力発揮や身体の安定性が向上します。
  • コアに対するトレーニングは腹横筋を活性化させた後に、徐々に他の筋群との協調性を高めるように進めていきます。
  • コアに対するトレーニングの最終目的は、意識をしないでもコアが勝手に働く自動化の状態になることです(脳内の運動プログラムの再構築)。
  • 一般的なコアに対するトレーニングは、コア収縮時に重心が上に移動してしまうため、重心を低く保つようなスポーツ競技においては適さないことがあります。
  • 丹田式コアトレーニングはコア収縮時に重心が上に移動しないため重心を低く保つようなスポーツ競技には適しています(マラソンや水泳、バレエダンサーなど重心を高く保つ必要がある競技は除きます)。
  • 丹田式コアトレーニングにより腹部と体幹を一体化できるため、スポーツパフォーマンスの向上がねらえます。
  • 重心高には最適な高さがあり、体幹操作によって高さを変化させることが可能です。
  • 武道における最適な重心高は一般的に丹田の位置になりますが、個人の筋力レベルやスポーツ競技によって異なるため、自分に合った重心高を見つけることが大切です。
  • スポーツ競技によっては状況に応じて重心高を変化させることでパフォーマンスを向上させることができます。

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