レジスタンストレーニングにおけるプログラムデザインの原則

作成者/トータルフィットネスサポート代表 齊藤 登

トレーニング指導をするうえでプログラムデザインは最も重要なものになります。
例えばパーソナルトレーニングを指導するお客様に対して、エクササイズを完璧なテクニックで実施させることができたとしても、プログラムが適切でなければそれほど効果的なものとはならないからです。

プログラムデザインに答えはありません。
同じお客様へのパーソナルトレーニングでも10人のパーソナルトレーナーがいれば10通りのプログラムデザインが生まれるからです。
これはパーソナルトレーナーの経験やトレーニング哲学による違いからくるものです。
しかし、全員に共通することは皆、このプログラムデザインの原則に基づいて作成しているということです。

この記事ではレジスタンストレーニングにおけるプログラムデザインの原則についてご紹介します。

1. レジスタンストレーニングの基本原則

  • 特異性の原則
  • 過負荷の原則
  • 漸進性の原則

この3つの原則のうちどれが欠けても期待したほどのトレーニング効果が得られなかったり、トレーニングによって傷害を招くこともあります。

(1)特異性の原則

身体は課せられた要求に対する特異的な適応をするため、特定の結果を出すためには特定の方法でとトレーニングをする必要があります。
レジスタンストレーニングにおける特異性ではエネルギー代謝的特異性とバイオメカニクス的特異性があります。

エネルギー代謝的特異性は3つあります。
① ATP-CP(PCr)系:爆発的なパワーが要求されるウエイトリフティングなど
② 解糖系(乳酸系):高いパワーを断続的に反復する特性のあるレスリングなど
③ 有酸素系:長時間の動作が継続するマラソンなど
これらの特質を考慮したうえでプログラムを作成していきます。

バイオメカニクス的特異性では、特異的な動きを分析してその動きにあったエクササイズを選択していきます。
例)テニスのストロークに対してダンベルフライ、バスケットボールのシュート動作には、インクラインプレスなど

<用語解説>
【バイオメカニクス】行動する生体を運動力学的に考察する学問で身体運動力学ともいいます。

(2)過負荷の原則

ある器官の機能をより発達させるためには、日常的な水準以上にその機能を使う必要があります。
レジスタンストレーニングの効果を引き出すためには、負荷が日常レベルを超えないと機能が向上することが難しく場合によっては低下してしまうこともあります。
しかし実際には、今日は昨日よりも強く、明日は今日よりも、ということを続けていくと障害を起こすリスクが高くなります。
そのためレジスタンストレーニングのプログラムでは、強度の増加と適切な休息時間をシステム的に計画することが大切になります。

過負荷をレジスタンストレーニングのプログラムに適用する方法としては以下のようなものがあります。

  • トレーニングの強度を上げる
  • トレーニングの頻度を増やす
  • エクササイズの数を増やす
  • セット数を増やす
  • 単純なエクササイズから複合的なエクササイズにする
  • セット間やエクササイズ間の休息を短くする

通常、レジスタンストレーニングにおいては複数の運動能力の向上(筋力・筋肥大・パワー・スピード・持久力など)を目的とする場合が多くあります。
しかし、これらを一度に向上させようとしても身体は多くの課題に対して適応することができません。
そのために、ある機能に対しては過負荷をかけ、それ以外の機能に対しては維持できる程度の負荷に留めるといった方法を採用していきます。

(3)漸進性の原則

漸進性(ぜんしんせい)とはレジスタンストレーニングの内容を簡単なものから難しいものへ、負荷の低いものから高いものへと少しずつレベルアップしていくことをいいます。
したがって、過負荷を能力の向上に応じて段階的に継続することが漸進性になります。
レジスタンストレーニングでは、オーバートレーニングや傷害発生を防ぐために進度が急激にならないように注意することで長期的なトレーニング効果を促します。

レジスタンストレーニングのプログラムデザインにおいては「特異性を考慮し過負荷を漸進的に適用」していくことが大切です。

<用語解説>
【オーバートレーニング】適切な強度、頻度を超えてトレーニングを続けたことにより、肉体的・精神的にストレスが蓄積された状態を指します。

2. プログラムデザインの変数

適切なレジスタンストレーニングの計画では、様々な要素や条件などを意図的に変化させることが効果的です。これらの要素・条件・方法のことをプログラムデザイン変数(またはトレーニング変数)といい主なもは以下になります。

① 初回面談と体力評価(ニーズ分析)
② エクササイズ種目の選択
③ トレーニング頻度
④ エクササイズの順序
⑤ トレーニング負荷と反復回数
⑥ トレーニング量
⑦ 休息時間

3. 初回面談と体力評価(ニーズ分析)

(1)一般の方の場合

目的を達成するために個人の特性や希望などを分析します。

① レジスタンストレーニングの状態と経験
対象が初心者なのか中級者・上級者なのかを判断し、どのようなトレーニングを経験してきたかを把握します(表1)。

表1. レジスタンストレーニング状況の分類例
現在レジスタンストレーニングを行っているか? どれくらいの期間、レジスタンストレーニング実施しているか? 1週間に何回レジスタンストレーニングを行っているか? レジスタンストレーニングの難易度と強度の程度は? 正確なテクニックで実施できるレジスタンストレーニングのタイプと数は? レジスタンストレーニング状態の評価
いいえ なし 初心者
はい 2ヶ月以下 1~2回 低い 3~5種目のマシンエクササイズ 初心者
はい 4~6ヶ月 2~3回 低い~中程度 マシンによる6~10種目のコアおよび補助エクササイズ、フリーウェイトでの3~5種目の補助エクササイズ 初心者
はい 8~10ヶ月 3回 中程度 マシンによる11~15種目のコアおよび補助エクササイズ、フリーウェイトでの3~5種目のコアエクササイズ 中級者
はい 1年 4回 中程度~高い マシンおよびフリーウェイトでの15種目以上のコアおよび補助エクササイズ 中級者
はい 1~1.5年 4回 高い マシンおよびフリーウェイトでの15種目以上のコアおよび補助エクササイズ、3~5種目のパワー・爆発的エクササイズ 上級者
はい 2年以上 5回 非常に高い マシンおよびフリーウェイトでの15種目以上のコアおよび補助エクササイズ、ほとんどのパワー・爆発的エクササイズ 上級者

*レジスタンストレーニング状態は、レジスタンストレーニングの経験とテクニックレベルに関する5つの質問のうち少なくても3つは一致した列の右端の段に相当する。
*「パーソナルトレーナーのための基礎知識」より

② 体力テストと評価
体力テストを実施することで現在の状態を評価します。
これにより体力的に不足しているものやレジスタンストレーニング開始前の筋力レベルを把握することができます。

③ 主なレジスタンストレーニングの目標
個別性や体力テスト結果の評価をもとに筋持久力向上や筋肥大、筋力強化など主要なレジスタンストレーニング目標を設定します。

(2)アスリートの場合

目的を達成するためにスポーツの特性、個人の特性や希望などを分析します。

① 動作分析
動作パターンや主な活動筋群を把握します。

② 生理学的分析
主なエネルギー代謝を分析します(表2)。

表2. スポーツ競技におけるエネルギー供給機構への依存度
競技種目 ATP-CP(PCr)(%) 乳酸系(%) 有酸素系(%)
50mスイム 98 2 0
ゴルフ・100m走・200m走・ウェイトリフティング 95 5 0
アメリカンフィットボール・バレーボール 90 10 0
バスケットボール 85 15 0
野球・サッカー(キーパー・ウイング・ストライカー) 80 20 0
100mスイム・400m走 80 15 5
バトミントン 80 10 10
テニス 70 20 10
サッカー(ハーフバック) 60 20 20
スカッシュ 50 30 20
200mスイム・800m走 30 65 5
1500m走 20 55 25
400mスイム・3000m走 20 40 40
10000m走 5 15 80
マラソン 0 5 95

*「ストレングス&コンディショニングⅠ理論編」より一部抜粋

③ 傷害分析
対象となるスポーツ競技においてよく起こる関節・筋の傷害はどの部位なのか、原因となる要素は何かといった点を考慮します。
傷害の特性については疲労しやすい部位や傷害歴、傷害の特徴などを調査します。
レジスタンストレーニングではこれらを踏まえて傷害発生部位の筋の連動性(筋連結)、隣接する他の関節運動(膝なら足関節や股関節)、特定の関節角度での筋力強化や同時収縮などをプログラムに組み込んでいきます。

④ レジスタンストレーニングの状態と経験
対象が初心者なのか中級者・上級者なのかを判断し、どのようなトレーニングを経験してきたかを把握します(表3)。

表3. レジスタンストレーニング状況の分類例
トレーニング状況 現在のプログラム トレーニング年数 週当たりの頻度 トレーニングストレス テクニック経験・スキル
初心者(非鍛錬者) トレーニングしてない、あるいはトレーニングを始めたばかり 2カ月以内 1~2回 なし、あるいは低い なし、あるいは最低
中級者(中程度の鍛錬者) トレーニング中 2~6ヶ月程度 2~3回 中程度 基礎レベル
上級者(鍛錬者) トレーニング中 1年以上 3~4回以上 高い 高い

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

⑤ 体力テストと評価
体力テストを実施することで現在の状態を評価します。
これにより体力的に不足しているものやレジスタンストレーニング開始前の筋力レベルを把握することでチーム内や他者と比較することができます。

体力テストの種目はそれぞれの競技や活動特性に応じたものを選ぶようにします。
例えば同じスピードでも10メートルダッシュと100メートルスプリントでは関与する身体機能が異なります。
持久力も一定の距離をいかに速く走るかというテスト(12分間走)と一定の距離をあらかじめ決められた速度と休息時間でどれだけ多くの反復回数できるかという間欠性のスプリントテスト(測定用シャトルラン)では能力が異なります。

⑥ 主なレジスタンストレーニングの目標
スポーツ競技の特異性、体力テスト結果の評価をもとに筋肥大や筋力強化、スピード・パワー養成など主要なレジスタンストレーニング目標を設定します(表4)。

表4. 競技シーズン別に示した一般的なトレーニングの優先度の例
競技シーズン 技術練習の優先度 トレーニングの優先度 レジスタンストレーニングの目標
オフシーズン 筋肥大と筋持久力(初期)、筋力とパワー(後期)
プレシーズン 競技および動作特異的なエクササイズ(例:競技に対応した筋力、パワー、筋持久力)
インシーズン プレシーズンのトレーニング目標の維持
ポストシーズン(積極的休養) 状況に応じて 状況に応じて 非特異的エクササイズ(競技技術やレジスタンストレーニング以外の活動も含める)

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

4. エクササイズ種目の選択

レジスタンストレーニングのプログラムを作成するためには、トレーニングの目的、動作の特異性、トレーニングの状況、使用できる器具や利用可能なトレーニング時間などを考慮しながら適切なエクササイズを選択する必要があります。

(1)エクササイズのタイプ

① コアエクササイズ
コアエクササイズは下記に該当するエクササイズを指します(注:ここでのコアは体幹という意味ではありません)。

  • 複数の大筋群(胸・肩・背部・臀部・大腿部)を動員するエクササイズ
  • 多関節のエクササイズ(関節を2つ以上動かすもの)
  • 安全で効果的に1RMテストが実施できるエクササイズ
例)ベンチプレス・スクワット・パワークリーン・デッドリフト・ショルダープレスなど

<用語解説>
【1RMテスト】1回だけ反復できる最大の筋力を測定するテスト

② 補助コアエクササイズ

補助エクササイズは下記に該当するエクササイズを指します。

  • 単一の小筋群(上腕二頭筋・上腕三頭筋・前腕部・下腿部・前脛部・頸部・僧帽筋・腹直筋・腰背部など)を動員するエクササイズ
  • 単関節のエクササイズ
  • 安全で効果的な1RMテストが実施できないエクササイズ
例)アームカール・トライセップスプッシュダウン・カーフレイズ・クランチ・バックエクステンションなど

③ ストラクチュラルエクササイズとパワーエクササイズ

コアエクササイズの中でも、脊柱(背骨)に直接的または間接的に負荷がかかるものをストラクチュラルエクササイズといいます。
例)バックスクワット、デッドリフトなど
また、ストラクチュラルエクササイズの中でも素早く爆発的に行うものはパワーエクササイズと呼ばれます。
例)パワークリーン、プッシュジャークなど

(2)特異的な動作

トレーニングの目的が階段の上り下りをもっと楽にしたい、スポーツ動作で発揮される筋力を高めたいなど特定の動作を改善したい場合には、トレーニングの動作と実際の動作が類似しているほうが効果を得られやすくなります(表5)。

例)バスケットボールでの跳躍動作
跳躍動作において動員される主な筋群は股関節と膝関節の伸筋群になります。
これらの筋群はレッグプレスやバックスクワットを行うことによって使用されます。
考慮する点としてはバスケットボールの跳躍動作はバランスをとりながら、体重を支える力を使って行われるので、バックスクワットは跳躍動作により特異的で、レッグプレスよりも適しているといえます。
また、パワークリーンはその素早い動作特性のため跳躍動作により特異的であり、もし時間的制約から2つのうち1つを選ぶ必要があるならば、特に動作がゆっくりとしたバックスクワットよりはパワークリーンを選んだほうが効果を狙えます。

表5. 動作に関連したレジスタンストレーニングのエクササイズ例
動作様式 関連するエクササイズ
ボールのドリブルやパス ベンチプレス・トライセラトップスプッシュダウン・リバースカール・ハンマーカール
ボールのキック ヒップアダクション・ヒップアブダクション・フロントランジ・レッグエクステンション・レッグレイズ
競泳自由形 ラットプルダウン・ラテラルショルダーレイズ・フロントランジ・アップライトロウ・バーベルプルオーバー
ジャンプ パワークリーン・プッシュジャーク・バックスクワット・フロントスクワット・スタンディングカーフレイズ
ラケットでのストローク ダンベルフライ・ベントオーバーラテラルレイズ・リストカール・リストエクステンション
ロウイング パワークリーン・ベントオーバーロウ・シーティッドロウ・ヒップスレッド・ホリゾンタルレッグプレス・デッドリフト・グッドモーニング
走動作・スプリント フロントランジ・ステップアップ・レッグエクステンション・レッグカール・トゥレイズ
投動作・投球 バーベルプルオーバー・オーバーヘッドトライセップスエクステンション・エクスターナルローテーション・インターナルローテーション

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(3)筋バランス

特異性を考慮してエクササイズを選択すると左右や前後などの筋力差が大きくなり傷害のリスクが高まることがあります。
それらを防ぐために拮抗する反対側の筋に対しても刺激を入れてバランスを維持する必要があります。
注意しなければならないのは、筋バランスは常に筋力が等しいことを意味していません。1つの筋や筋群と対応したもう一方の筋や筋群との筋力、パワーなどの適正な比率のことをいいます。
プログラムデザインにおいては特異性の原則と全面性の原則という矛盾する側面をいかに1つのトレーニングで実現していかが重要になります。 

<用語解説>
【全面性の原則】トレーニングは、上半身だけ、下半身だけといったような偏ったものではなく全身のバランスがとれるようにプログラムを組まなければならないという原則

(4)エクササイズテクニック

エクササイズの選択するときはエクササイズテクニックを考慮する必要があります。
いままで経験したことがないエクササイズを選択すると習得するまでの時間がかかります。
もしレジスタンストレーニングに期間的な制約(短期間でのレジスタンストレーニング)がある場合は未経験のエクササイズは外す必要があるかもしれません。

(5)1回のトレーニングで使える時間

トレーニング時間が限られている場合は時間的な効率のよいエクササイズを選択する必要があります。

例)陸上短距離選手の股関節と大腿部の強化でフリーウエイトのフロントランジをマシンのレッグプレスに変更
フロントランジではバーにプレートとカラーを装着→ラックからバーを担いで開始姿勢→各々の脚で10回反復→ラックにバーを戻す工程があるために時間がかかります。
一方レッグプレスではマシンのピンをウエイトスタックに差込み10回のレッグプレスを行うだけなのでランジよりも少ない時間で済みます。
マシンのレッグプレスでは競技特異性が低くなってしまいますが、他のエクササイズやより多くのセットが実施可能になります。
考えなければならない点としては、フロントランジは競技特異的に有効性のあるエクササイズになりますので、トレーニングシーズンの目標(プレシーズンやインシーズン)によっては、フロントランジを選択するほうがよい場合もあります。

5. トレーニング頻度

(1)一般の方の場合

トレーニング頻度はトレーニング状況や実施内容、身体活動などを考慮しながら決めていきます。

① トレーニング状況

  • トレーニング状況のレベルによって休息日数を設定します(表6)。
  • セッション間の休息は1日~3日で間隔を等しくするようにします。
  • 中上級者はスプリットルーティン法を用いることでトレーニング量を増大させることができます(表7)。

<用語解説>
【スプリットルーティン】全身のレジスタンストレーニングのプログラムを部位別に2~3に分割して、それぞれ違う日にトレーニングを行う方法

表6. トレーニング状況に基づいたレジスタンストレーニングの頻度
トレーニング状況 頻度の目安(回/週)
初心者 2~3
中級者 3~4
上級者 4~7

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

表7. スプリットルーティンの例
トレーニング日 部位/筋群 トレーニング頻度
1上半身
2下半身
休み 下半身 上半身 休み 下半身 上半身 休み 週4回
1胸・肩・上腕三頭筋
2下半身
3背部・僧帽筋・上腕二頭筋
休み 胸・肩・上腕三頭筋 下半身 背部・僧帽筋・上腕三頭筋 休み 胸・肩・上腕三頭筋 下半身 週5回
1胸・背部
2下半身
3肩・腕
胸・背部 下半身 肩・腕 休み 胸・背部 下半身 肩・腕 週6回

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

② トレーニング強度とエクササイズタイプ
トレーニングによる疲労の回復もトレーニング頻度を決めるうえで大きな要因になります。

  • 最大または最大に近い強度のトレーニングでは長い回復期間を要します。
  • 上半身の筋群は下半身より早く回復します。
  • 単関節運動は多関節運動より早く回復します。

③ 身体活動との関わり
私生活や仕事における身体活動を把握したうえでトレーニング頻度を考える必要があります。

(2)アスリートの場合

トレーニング頻度はトレーニング状況や実施内容、競技シーズン、身体活動などを考慮しながら決めていきます。

① トレーニング状況

  • トレーニング状況のレベルによって休息日数を設定します(表6)。
  • セッション間の休息は1日~3日で間隔を等しくするようにします。
  • 中上級者はスプリットルーティン法を用いることでトレーニング量を増大させることができます(表7)。

② 競技シーズン
競技シーズンによって技術練習の重要性や割合が変動するためトレーニング頻度を調整していく必要があります(表8)。

表8. 競技シーズンに基づいたレジスタンスレーニングの頻度(鍛錬者)
競技シーズン 頻度の目安(回/週)
オフシーズン 4~6
プレシーズン 3~4
インシーズン 1~3
ポストシーズン(積極的休養) 0~3

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

③ トレーニング強度とエクササイズタイプ
トレーニングによる疲労の回復もトレーニング頻度を決めるうえで大きな要因になります。

  • パワーエクササイズはより長い回復時間が必要となります。
  • 最大または最大に近い強度のトレーニングでは長い回復期間を要します。
  • 上半身の筋群は下半身より早く回復します。
  • 単関節運動は多関節運動より早く回復します。
  • より頻繁にトレーニングする能力は、軽めのトレーニングと強めのトレーニングを交互に配置することによって高められます。

④ 現在行っている他のトレーニング、身体活動や競技の技術練習との関わり
アスリートがすでに有酸素性と無酸素性のトレーニング(スプリント、アジリティ、スピード持久力など)、競技の技術練習、またはこれらの要素を組み合わせたものを行っている場合はレジスタンストレーニングの頻度を減らす必要があります。

これらに加え職業上の肉体的消耗の影響も考慮しなければなりません。
肉体労働に従事する、身体活動を他者に指導・補助している、あるいは1日中立っているようなアスリートに対しては身体活動の少ないアスリートと同じトレーニング頻度に設定すると疲労による傷害のリスクが高まります。

レジスタンストレーニングを行うタイミングが技術・戦術練習の前か後かも考慮する必要があります。
前だと筋を必要以上に疲労させてしまうことは避けなければなりません。反対に後だとすでに疲労しているため、大きな負荷をかけることが難しくなります。
スポーツの現場では技術・戦術練習の目的・内容・強度をあらかじめ把握したうえで適切なプログラムを組むことが求められます。

例)練習前
ハングクリーン、ハングスナッチ、スクワットなどの多関節種目を高重量・低レップにて1~2セット程度実施する。
運動量を少なくすることで疲労を最小限に抑え、高重量の刺激により神経筋が活性化されるためにその後の練習において良い影響を与えることができます。

例)ダッシュやランニングが多かった練習後のトレーニング
脚部の疲労を考慮して、上半身に限定したトレーニングや自重での種目などで構成することで対応が可能となります。

6. エクササイズの順序

エクササイズの順序とは1回のトレーニングで行われるレジスタンスエクササイズの順序を指します。エクササイズの順序の決定においては、あるエクササイズがその後に続くエクササイズで発揮する力やテクニックの質に与える影響を考慮する必要があります。
また最大努力による筋力発揮と適切なエクササイズテクニックが可能となるように配列しなければなりません。
エクササイズの順序を決める一般的な4つの方法を以下に示します。

(1)パワーエクササイズ、その他のコアエクササイズを経て補助エクササイズを行う

パワーエクササイズでは高いスキルレベルと精神的集中を要し疲労の影響を受けやすいため、トレーニングではフレッシュな状態にある最初に行います。
エクササイズの選択でパワーエクササイズが選択されていない場合はその他のコアエクササイズが最初になります。
可動する関節や動員される筋群に着目するとこの順序は、多関節運動から単関節運動へ、大筋群のエクササイズから小筋群のエクササイズの流れになっています。

エクササイズ例)
パワークリーン(パワーエクササイズ)→バックスクワット(その他のコアエクササイズ)→レッグカール(補助エクササイズ)

(2)上半身と下半身のエクササイズを交互に行う

エクササイズの間に回復を進める方法として上半身のエクササイズと下半身のエクササイズを交互に行うことが有効です。
特に上半身または下半身のエクササイズを連続して行うことが非常にきついと感じている初心者にとって有益です。
トレーニング時間が限られている場合においても、エクササイズ間の休息時間を最小限に抑えることができるため運動量を確保することができます。

エクササイズ例)
ベンチプレス(上半身)⇔バックスクワット(下半身)

(3)「押す」エクササイズと「引く」エクササイズを交互に行う

同じ筋群が連続して使われないためエクササイズの間に回復を促進することができます。

エクササイズ例)
ショルダープレス(押す)⇔ラットプルダウン(引く)

(4)スーパーセットとコンパウンドセット

スーパーセットとコンパウンドセットは2つのエクササイズを連続して行うことで1セットとし、それらのエクササイズの間は休息を設けないか、わずかな休息のみを設ける上級者向けの方法です。
どちらの方法も2つのエクササイズを組み合わせるため時間の効率が高く、意図的に「きつい」状況をつくることができます。

スーパーセットは拮抗する筋・筋群(主働筋と拮抗筋)を連続して交互に行います。
スーパーセットの例)
ベンチプレス→ベントオーバーロウ

コンパウンドセットは同じ筋・筋群を強化する2つのエクササイズを連続して実施する方法です。
コンパウンドセットの例)
アップライトロウ→ラテラルレイズ

<用語解説>
【主働筋:しゅどうきん】ひとつの運動を主力となって行う筋のこと
【拮抗筋:きっこうきん】ある動作と反対の動作を拮抗動作と呼び、この作用をする筋のこと

7. トレーニング負荷と反復回数

負荷はエクササイズ1セットあたりの重量で、反復回数とは繰り返し可能な回数になります。

(1)負荷と反復回数の関係

負荷が軽ければ反復回数は多くなり、負荷が重ければ反復回数は少なくなります。
反復が可能な最大の回数をRM(repetition maximum)といい、負荷強度の指標として用いられます。
例えばデッドリフトを80kgの重量で10回できる場合は10RMは80kgになります。

表9は負荷と反復回数の関係を示したもので反復回数から負荷強度を予測することができます。
適用されるエクササイズとしてはパワークリーン、バックスクワットやベンチプレスなどの1RMが測定できるエクササイズになります。

表9を使用するときの注意点としては以下のものがあります。

  • 日頃からレジスタンストレーニングを行っている者は、特に下半身のコアエクササイズにおいて%1RMに対する反復回数よりも多くの回数を反復できる場合があります。
  • ある%1RMで実施可能な反復回数は単一のセット(1セットだけ)を想定しているため、複数のセットを行う場合は負荷を減らす必要があります。
  • マシンエクササイズに対して設定されたある%1RMはフリーウエイトエクササイズよりも、より多くの反復回数を可能にします。
  • 基礎的な筋力が低い初心者や筋力レベルの高い上級者には適用できないことがあります。
  • %1RMに対する反復回数が最も正確なのは、1RMの75%以上の負荷、10回以下の反復回数になります。
上記のことから表9の%1RMから計算された負荷はレジスタンストレーニング種目のRM負荷を推定する一例として考える必要があります。
こうした短所があるため、負荷の設定は最大挙上重量で決定された1RMに対する比率のほうが、最大下負荷から推定した1RMを用いるより正確だと考えられています。

表9. 1RMの割合と反復できる回数の関係(%1RM-反復回数関係)
%1RM 反復できる回数
100 1
95 2
93 3
90 4
87 5
85 6
83 7
80 8
77 9
75 10
70 11
67 12
65 15

*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(2)1RMテスト

1RMに対する比率でトレーニング負荷を設定するためには、1RMテストを行う必要があります。
このテストは原則としてレジスタンストレーニングを積んだ中級者あるいは上級者でテストで用いるエクササイズのテクニックを習得していることが条件となります。
1RMの正確な特定には様々な手法が用いられますが、下記にその手順の1つを示します。

<1RMテストの手順>
1. 楽に5回~10回反復できる重量でウォームアップするように指示する
2. 1分間の休息
3. 下記のように増量し、選手が3回~5回反復できるような「ウォームアップ負荷」を見積もる
• 上半身のエクササイズは4~9kgまたは5~10%
• 下半身のエクササイズは14~18kgまたは10~20%
4. 2分間の休息
5. 下記のように増量しながら、選手が2~3回繰り返すことのできる「最大に近い負荷」を見積もる
• 上半身のエクササイズは4~9kgまたは5~10%
• 下半身のエクササイズは14~18kgまたは10~20%
6. 2~4分の休息
7. 下記のように負荷を増量する
• 上半身のエクササイズは4~9kgまたは5~10%
• 下半身のエクササイズは14~18kgまたは10~20%
8. 1RMを試みることを選手に指示する
9. 成功したら2~4分間休息し、ステップ7へ戻る。失敗したら2~4分間休息し、下記のように負荷を減らす
• 上半身のエクササイズは2~4kgまたは2.5~5%
• 下半身のエクササイズは7~9kgまたは5~10%
そしてステップ8へ戻る
この負荷の増・減を、選手が正しいテクニックで1回完了できるまで続ける。理想的にはこの1RMの試行は5セット以内が望ましい。
*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(3)トレーニング目標に基づく負荷と回数の設定

反復回数はトレーニングの目標(筋持久力・筋肥大・筋力・パワー「)に基づいて決定してきます(表10)。

表10. トレーニング目標に基づく負荷と反復回数の設定
トレーニング目標 負荷(%1RM) 目標反復回数
筋力 ≧85 ≦6
パワー:1回の最大努力
パワー:複数の最大努力
80~90
75~85
1~2
3~5
筋肥大 67~85 6~12
筋持久力 ≦67 ≧12

*筋力についてのRM負荷設定はコアエクササイズにのみ適用される。補助エクササイズにていては8RMより重い負荷にするべきではない。
*パワーの負荷-反復回数設定は%1RM-反復回数関係と一致していない。平均的に、およそ1RMの80%の負荷が2~5回の反復回数で行われる。
*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(4)トレーニング負荷の増加

トレーニング負荷の増加の方法としてツーフォーツー・ルールがあります。
これはあるエクササイズについて2回のトレーニングで連続して最終セットに設定回数よりも2回以上多く反復することができた場合は、次のトレーニングから使用重量を増加するようにします。

例)バックスクワット(10回×3セット、トレーニング日は月・水・金)
月曜:3セット目の回数12回以上できた
水曜:3セット目の回数12回以上できた
金曜:設定重量を増加する

8. トレーニング量

トレーニング量とは1回のトレーニングで挙上された重量の総量を指します。1セットとは休息のため中断するまで連続して行われる反復回数を指します。
トレーニング量は、重量×回数×セット数によって求められます。

例)バックスクワット100kgを10回3セット実施した場合
100kg×10回=1000kg
1000kg×3セット=3000kg
トレーニング量は3000kg

(1)レジスタンストレーニングの目標に応じた量の設定

レジスタンストレーニングの目標に適した量と強度を調整することによりトレーニングを効果的に行うことができます(表11)。

表11. トレーニング目標に基づいたトレーニング量の設定
トレーニング目標 目標回数 セット
筋力 ≦6 2~6
パワー:1回の最大努力
パワー:複数の最大努力
1~2
3~5
3~5
3~5
筋肥大 6~12 3~6
筋持久力 ≧12 2~3

*この設定はウォームアップを含めておらず、コアエクササイズのみに適用される。
*パワーの負荷-反復回数設定は%1RM-反復回数関係と一致していない。平均的に、およそ1RMの80%の負荷が2~5回の反復回数で行われる。
*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(2)レジスタンストレーニング状況

レジスタンストレーニング状況はトレーニングでエクササイズを行うときのセット数に影響を及ぼします。
一般的にトレーニング経験がない初心者は、中級者あるいは上級者よりも実施するセット数は少なくなります。
初心者に対しては最初はシングルセットを用いてトレーニングを行い、体力レベルの向上に応じてマルチセットへと移行するようにします。

<用語解説>
【シングルセット】1種目1セットのみを実施すること
【マルチセット】1種目2セット以上実施すること

9. 休息時間

休息時間はエクササイズを複数セット(マルチセット)行うときのセット間の時間を指し、トレーニングに対する身体反応に強い影響を及ぼします。

(1)レジスタンストレーニングの目標に応じた休息時間の設定

レジスタンストレーニングの目標に応じて休息時間を設定することによりトレーニングを効果的に行うことができます(表12)。

表12. トレーニング目標に基づく休息時間の設定
トレーニング目標 休息時間
筋力 2~5分
パワー:1回の最大努力
パワー:複数の最大努力
2~5分
2~5分
筋肥大 30秒~1.5分
筋持久力 ≦30秒

*補助エクササイズに設定された1RMの%がトレーニング目標の範囲を超えてしまう場合があるので(例:≧8RMの負荷が筋力トレーニングプログラムの一部として、補助エクササイズに推奨されることがある)、休息時間を設定するときは各エクササイズで使われる負荷を考察する必要がある
*「ストレングストレーニング&コンディショニング第3版」より

(2)レジスタンストレーニング状況

表12は推奨される休息時間の長さですが、通常この表の値は初心者やトレーニング経験の浅い者には適していません。理由としてはトレーニング経験を積んだ者よりも回復のためにより多くの時間が必要となるからです。
特に初心者を指導するときは回復を促進させるためにセット間およびエクササイズ間で2~5分の休息を用いることが最適になります。

10. まとめ

  • レジスタンストレーニングのプログラムデザインは初回面談と体力評価によるニーズ分析から始まります。
  • ニーズ分析の情報を基に適切なエクササイズが選択され、トレーニング頻度が決定されます。
  • エクササイズの順序が考えられ、続いて希望するトレーニング効果に基づいた負荷設定やトレーニング量が選択されます。
  • 休息時間を決めることはプログラムデザインの最終段階になります。
  • プログラムデザインの原則をもとに作成されたプログラムによって安全で効果的なレジスタンストレーニングを実施することができます。

参考文献

1)Jared W. Coburn, Moh H. Malek. NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識 第2版. 特定非営利活動法人NSCAジャパン. 2013.

2)Thomas R.Baechle, Roger W.Earle. ストレングストレーニング&コンディショニング 第3版. 有限会社ブックハウス・エイチディ. 2010.

3)石井直方ほか. トレーニング用語辞典【新訂版】. 森永製菓株式会社健康事業部. 2001.

4)特定非営利活動法人 NSCAジャパン. ストレングス&コンディショニングⅡ エクササイズ編. 株式会社大修館書店. 2003.

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